小原ききょう(創作家)

長編小説や詩、エッセイなどを「エブリスタ」「ツイッター」等で書いています。

2023-01-01から1年間の記事一覧

魔鏡④

estar.jp 魔鏡④ 鏡の所持を禁じる国で 鏡を手に入れた少女は 毎夜 鏡に問うた 鏡よ この世界で一番美しいのは誰 その回答はいつも同じだ もちろんそれは自分だ 少女は大満足だった だが 数十年経ち 鏡に映るのはいつも老婆だった 鏡の嘘つき! 女は鏡を叩き…

「時々、僕は透明になる」⑥

estar.jp ◆帰宅 自宅まで、徒歩20分、つくづく電車通学でなくてよかったと思う。透明だったら改札はどうなることやら。 けれど、問題はここからだ。 家に帰っても母に見えなかったらどうする? 声は出るだろうから・・ 念のため「あああ・・」と出してみる…

「三千子」~ 記憶に残らない女⑥

estar.jp 近藤は言った。 「俺さあ、ほんの短い間だったけど、三千子とつき合ったんだよ」 「男女の関係か?」と俺は訊いた。 近藤は「もちろんさ」と応えて、「けど、ただの遊びだったんだ。丁度、女と別れた直後だったからな」とにやっと笑った。 「三千子…

「時々、僕は透明になる」⑤

estar.jp そんなことを考えながら、僕は斜め前の窓際の席の水沢純子を見た。 僕の苦しみとは対照的に水沢純子が涼しげに先生の話を聞いている。 窓の外の青い空に水沢さんの黒髪が溶けている・・そんな風に見えた。 ああ、このまま、透明のままだったら、あ…

「三千子」~ 記憶に残らない女⑤

estar.jp ◆別れる理由 窓の外の暗闇に、ピカッと一条の光が走った。数秒、間を置いて雷の音が響き渡った。かなり大きな音だ。 同時に、店内の照明が、パチパチッと言う小さな点滅音がして、灯りが点いたり消えたりした。 近くの女性客が「やだ、停電になるの…

魔鏡③

estar.jp 魔鏡③ 鏡に映るのは左右が逆だ 上下が逆になることはない 不思議に思った女は 逆立ちをしてみた 当然 髪が垂れ逆さの女が映っている 自分の愚かさに気づいた女は風呂に入ったが 鏡の中の立像は女から男に変わっていた

魔鏡②

estar.jp 魔鏡② 女は鏡に向かってナイフを振り上げた 憎い男に突き立てたかったからだ 当然そんな勇気はない 女はナイフを仕舞い寝た 翌朝 一人の男の〇体が見つかった その凶器の形状は 女が鏡に見せた物と同一だった 願いが叶った女は別の標的を定め ナイ…

魔鏡①

estar.jp 魔鏡① 夜に鏡を見つめていると 顔が鏡の中に残ることがある 男への思いを鏡に告げた女は 叶わぬ思いを抱いたまま寝入った 真夜中 鏡に写り込んだ女の顔が 誰もいないのに一人で微笑んでいる 翌朝 鏡の中から出てきた女に誘われた男が 行方不明にな…

「時々、僕は透明になる」④

estar.jp ◆授業中に発症 5月の日差しが、教室の窓に反射している。 窓際の席にはまるで後光が差しているような女の子、水沢純子が懸命に教師の話を聞いてノートをとっている。 その姿を切り抜いて額に飾りたいくらいだ。 僕は水沢純子に恋をしている・・ け…

「三千子」~ 記憶に残らない女④

estar.jp 外を見ると、更に雨が強くなっているのがわかる。窓際の席。ガラス窓の上を雨粒がタラタラと伝っている。 目の前の近藤は、大きなハンバーグを食べながら、 「その時からだよな? 市村三千子が痩せ始めたのは・・」と話を戻した。 「ああ・・そうだ…

「三千子」~ 記憶に残らない女③

estar.jp 確か、あれは、授業が休講になり、大学のラウンジで、三千子とお茶を飲んでいた時だ。 彼女と話すことにも飽き、暇を持て余した俺は、ラックの週刊誌を手に取り、パラパラと捲っていた。 何となく、その中のアイドルのグラビアを眺めていた。 そん…

「時々、僕は透明になる」③

estar.jp ◆通学路にて いつもの通学路、あえて「いつもの」という言葉を使いたいくらい、いたって何でもない一日が始まろうとしている。 昨晩の衝撃が体のどこかにまだ残っているのか、少し、体がだるいことを除けば何でもない朝だ。 目の前を同じクラスの男…

「並木道」~140字創作

「並木道」 美しい並木道の中 あなたはそっと手を伸ばしてきましたね でも私は意地悪して知らんぷり 照れくさそうなあなたの顔 そんなあなたが可笑しくて 私は道の先に目をやりました 木立の美しさに見入っていると あなたの温もりが手に触れ 私はそっと温も…

「三千子」~ 記憶に残らない女②

estar.jp ◆深夜のファミレス 雨の夜だった。 深夜のファミレスで 俺は久しぶりに会った大学時代の友人と食事をしていた。 遅い時間ともいうこともあって、家族客はおらず、店内は閑散としていて静かだった。おまけに、外は長雨だ。時折、雨宿り代わりに一人…

「時々、僕は透明になる」②

estar.jp シャーペンを握る手が薄い・・いや、透明に見えた。机の木目が透けて見えている。 右手をくいと参考書の見開きの前に置いてみた。同じく活字が透けてよく見える。 眼鏡を外し、右手を左手で掴んでみる。 確かにある。右手の感触があるし、肩から右…

「三千子」~ 記憶に残らない女①

estar.jp 「三千子」~ 記憶に残らない女 ◆記憶 どうしても、記憶から欠落してしまう人間がいる。 例えば、何度も会ったことがあるはずなのに、顔を見ても、誰だったか思い出せない。 またその逆に数回会っただけなのに、その人の顔はもちろんのこと、その人…

「時々、僕は透明になる」①

estar.jp 「時々、僕は透明になる」 (序) 「人を好きになるのに、理由なんていらない」 そんな言葉があるけれど、 人を好きになるのには必ず理由があると思う。 でも、その理由は探してもなかなか見つからないものだ。 もし見つかったとしても、人には言え…

◆総合案内(小原ききょう インデックス)◆

総合案内(小原ききょう) 小説投稿サイト「エブリスタ」「カクヨム」「アルファポリス」等で小説を書いています。 「X」には詩をアップしています。 estar.jp 【連載小説一覧】 *小説投稿サイト「エブリスタ」にリンクしています。 「はてなブログ」に順…